かせいソーダと塩素のバランス経営

食塩水を電気分解すると、かせいソーダ、塩素、水素が一定の割合で生産されます。何れかを選択的に生産することはできないため、この電気分解、いわゆる電解を生業とする化学メーカーでは、特に、かせいソーダと塩素の両事業のバランスが利益を生み出すためのカギとなります。

かせいソーダと塩素は、何れも汎用化学品です。厳しい競争環境のなかで、いかにして効率よく生産し収益性を高めるかが課題となっています。このため、コスト競争力の観点から、電解の高効率化やアリルクロライドの収率向上といった恒常的な改善を行っています。

また、生産の効率化の点では、生産規模の確保や設備稼働の維持向上を図ることも必要です。大阪ソーダでは、国内4位のかせいソーダ製造能力を持つ一方、塩素サイドではプロピレンと反応させて、アリルクロライド(AC)とエピクロルヒドリン(EP)を製造するだけでなく、これらを原料とした付加価値の高い製品群を含む「AC・EPチェーン」という安定した消費先を自社内に確保しています。

水素利用に脚光

 

大阪ソーダでは、電解から生み出される純度の高い水素を用いて、高性能カーボンナノチューブの開発を進めています。当社のカーボンナノチューブは特殊な製法により、世界最高水準の導電性能を実現しています。

この開発テーマは、産学連携で進めている「革新的ナノ均一構造正極による超高速充放電亜鉛二次電池の開発」に採用されており、2024年度「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」に採択されています。

独自路線を歩む化学メーカー

大阪ソーダの競争力の源泉は、電解からの一貫生産にあります。電解から生み出される塩素を用いて複数の世界トップシェアの機能化学品を製造するAC・EPチェーンが当社の特徴となっています。AC・EPチェーンのメリットはまず第一に、自社原料を用いて合成ゴムや合成樹脂、アリルエーテル類といった付加価値の高い製品を製造・販売できることです。第二のメリットは、これらの製品の製造により、原料側の基礎化学品において塩素の需要先が確保でき、電解の安定的な操業が可能となる点です。このため、原料側の基礎化学品では、かせいソーダと塩素の生産効率の追求によるコスト競争力の強化を、一方の機能化学品においては、電解の稼働を維持向上すべく事業の拡大を図っています。

こうした両事業のシナジーこそが、複数の世界トップシェア製品誕生の背景の一つ。AC・EPチェーンによって、原料調達の安定化、コスト競争力の強化、品質向上だけでなく、外部環境に適応した柔軟な販売戦略の選択が可能となり、製品チェーンの利益の最大化につながっているのです。

グローバルニッチトップ企業100選に選定されたダップ樹脂

 

大阪ソーダは、ダップ樹脂の戦略性、独創性、市場占有性が評価され、2014年に経済産業省「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」に選ばれました。
この賞は、ニッチな市場において、ブランド確立とシェア拡大を図ると同時に高水準の利益を確保し、トップメーカーとしての地位を築くという成長のシナリオに取り組んでいる企業を認定、顕彰し、その知名度の向上や海外展開を支援することを目的に、経済産業省が日本再興戦略の一環として創設されたものです。
ダップ樹脂は、当社独自の重合、精製技術により生産効率の向上はもちろん、高品質かつ安定的な製品供給を可能としており、世界で唯一、当社が工業的に生産を行っている製品です。環境に優しいUVインキの性能向上に貢献するほか、高度な品質レベルが要求される電子部品、建材などの幅広い産業分野で採用され需要が拡大しています。

グローバルニッチトップを狙う事業戦略

大阪ソーダは、独自の開発力・生産技術力を武器に世界市場の中でもニッチなマーケットで強みを発揮するグローバルニッチトップ戦略により、合成樹脂、合成ゴム、アリルエーテル類といったAC・EPチェーンに属する製品で世界シェアNo.1の地位を確立しています。

当社は、このグローバルニッチトップ戦略の下で新たな事業分野に進出する際に3つの視点を大切にしてきました。1つ目は、自社の独創性を活かしたユニークな機能性を持つ製品の開発。2つ目は、先駆者利益を獲得しうる市場の選択。3つ目は、市場ニーズに応じた用途・グレード開発。これら3つの視点で、製品ブランドと市場におけるプレゼンスを確立し、価格競争に陥りにくい事業環境を築いています。

グローバルニッチトップの地位確立に向けて

 

当社は、1960年代に独自製法の確立によりダップ樹脂を事業化しました。効率的な製法により生み出された競争力のある製品が市場を席巻したことにより欧米の先行メーカーが相次いで撤退。事業化当初は、成形材料として使用されていましたが、その後、市場ニーズに応じた研究開発によりUVインキの速乾性を高めるための添加剤という事業化当時には存在しなかった新たな用途を開拓するに至りました。また、顧客のニーズにフィットするグレードの開発により「○○といえば、大阪ソーダ」と、その素材の代名詞的存在となることを目指してきたことで現在のポジションを確立しています。

第三の収益の柱、ヘルスケア事業

大阪ソーダは、独創的なモノづくりの技術をヘルスケア分野にも展開しています。この分野における当社の強みは、有機合成、バイオ、クロマトグラフィーの3つの独自技術。これらを応用して医薬品精製材料や医薬品原薬・中間体の開発・製造といった事業を行っており、両事業ともに技術的な難易度が高く、他社が簡単に模倣することは難しいといった特徴があります。

医薬品精製材料である特殊シリカゲルは、主に糖尿病治療薬や肥満症治療薬をはじめとする中分子医薬品の精製に使用されており、世界の製薬メーカーに供給しています。300種類を超える豊富なグレードと、カラム・分析装置といった周辺商材の充実したラインナップを持っています。

医薬品原薬・中間体は、低分子医薬品の製造で長年培ってきた受託製造および開発における技術力が製薬企業から高く評価されています。

当社は両事業の強みを活かした事業戦略として、医薬品精製材料の特殊シリカゲルを中心に、ポリマーゲル、カラム・分析装置、医薬品原薬・中間体の4つの事業シナジー効果の最大化を図っています。

成長著しい医薬品精製材料

 

大阪ソーダには、合成樹脂、合成ゴム、アリルエーテル類のほかにもグローバルニッチトップシェアを獲得している製品があります。それが、医薬品の精製工程で使用される特殊シリカゲルです。この製品は、液体クロマトグラフィーという分離手法に用いられ、主に研究機関での分析や、中分子医薬品などの不純物の除去に役立っています。当社のシリカゲルは、中分子医薬品のなかでも、糖尿病治療薬の精製において重要な製品。さらに近年では、肥満症治療薬などにも用いられるなど、食生活や生活様式の変化を背景に需要が拡大しています。

当社は事業を通じて、製薬メーカー様の安定供給と品質の信頼性確保に貢献することで、皆さまの健康で豊かな人生を支えてまいります。