株主との建設的な対話に関する方針

当社は、株主との対話について、管理本部長がその統括を行うこととしており、経営企画部広報グループ、管理部、各事業部その他関係部門と連携を図りながら株主をはじめとするステークホルダーとの対話を合理的な範囲で前向きに進めています。また、年2回開催しているアナリスト・機関投資家向けIR説明会では、代表取締役が直接説明を行い、把握した意見等について経営陣に適宜報告しています。

なお、対話に際しては、法令及び社内規定に基づき、インサイダー情報の漏洩がないよう情報管理を行っています。

投資家との対話

当社では、投資家との対話を重視し、代表取締役をはじめマネジメント層による対話の機会拡充に取り組んでいます。また、IR部門責任者において実施した投資家との対話については、経営会議および取締役会において年2回、経営へのフィードバックを実施しています。

対応者 形式 2021 年度 2022年度 2023年度 2024年度
代表取締役社長 決算説明会 2回 2回 2回 2回
個別ミーティング 5件 5件 6件 10件
エンゲージメントミーティング 0件 0件 1件 1件
取締役・執行役員 事業説明会 0回 0回 1回 0回
エンゲージメントミーティング 0件 1件 1件 1件
IR部門責任者 グループミーティング 0回 7回 11回 13回
個別ミーティング 34件 48件 79件 72件
エンゲージメントミーティング 0件 2件 2件 2件
施設見学会 0回 3回 2回 1回

 

投資家との対話状況

実施した対話の事例について掲載しています。

2024年度

対話の事例

回答

御社のシリカゲルは基本的に中分子薬の精製工程に使用されると理解しているが、低分子薬の精製工程でも使用されているのか?

当社のシリカゲルを低分子薬の開発段階から使用しているという情報がある。低分子は一般的には蒸留・晶析などで精製されるが、低分子のなかには比較的分子量の大きいものも存在しており、そうしたケースではシリカゲルが使用される可能性があると認識している。

医薬品精製材料における新興国、特に中国・インド向けのビジネスの状況を教えてほしい。

中国、インドにおいても開発用サンプル出荷の引き合いが増えている状況。出荷先には、当社のシリカゲルを使用し、糖尿病治療薬を製造している医薬品メーカーや製造開発受託企業も含まれていることから、肥満治療薬にも使用されると見ている。26年3月に先行メーカーのベース特許が切れるため、今後さらに中国・インドからのオーダーが増えると予想している。

シリカゲルの松山工場の営業生産開始時期、尼崎工場の完工時期がともに前倒しできる見込みとなった背景を詳しく教えてほしい。

新規製造サイトにおける製造品の顧客バリデーションには通常1年近くの期間を要するが、松山工場では顧客との密なコミュニケーションにより初期評価で尼崎と同等品であるとの結果を得ることができたため、当初計画より前倒しで営業生産開始の了承を得ることができた。

尼崎工場については、工事にともない一定の運転停止期間が発生することから販売に影響が出ないよう工事の分散化を計画していた。しかし、松山工場での営業生産開始が前倒されたことに加え、尼崎工場の現有設備で工程改善等により生産性が向上したことで一定の在庫が確保ができたため、工事期間を短縮することができた。糖尿病治療薬や肥満治療薬向けの需要増加が急速に進んでいる状況を踏まえ、さらに次期増強を検討しており、25年内に方針を決定する予定。

シリカゲルに対して値下げ要求はあるのか?

現時点でシリカゲルに対して値下げ要求はない。薬価に占めるシリカゲルの割合は小さく、薬価改定の影響は生じていない。むしろ製薬会社から価格よりも数量交渉、納期に対しての要望が高まっている状況。

基礎化学品は、25年度の生産販売数量が大幅に回復する計画だが、その背景を教えてほしい。

25年度は、水島の生産トラブルが通期で解消する。エピクロルヒドリンは、23年度からのトラブル影響で失ったシェアを回復させるという戦略を計画に織り込んでいる。クロール・アルカリも安定稼働の継続と地域密着型営業を強化し、拡販に注力する。

アクリルゴムのデボトル増強による影響は?

24年7月にボトルネック解消工事を実施した際、設備能力の見極めに時間を要し、一時的に出荷調整を行った。近年、アクリルゴムは国内外で採用が増えており、25年度は増強した能力を活かし数量を伸す計画。

米国の関税措置による影響は?

当社の米国向け売上高は、他の地域と比べて少ないため、米国関税措置による直接的な影響は軽微と認識している。一方で、米国関税措置にともなう世界的な景気悪化により、エピクロルヒドリンやアリルエーテル類の市況回復がさらに遅れることが懸念されるため、その影響を計画に織り込んでいる。

配当性向が低い。今後の考えを聞かせてほしい。

株主の皆さまに対する利益配分は、当社の重要な責務と考えており、25年度までの中期経営計画期間中は、総還元性向40%を目指す方針としている。高収益事業であるヘルスケアが、この先も順調に成長した場合、キャッシュが溜まっていく構図となる。足元では、シリカゲルや研究開発といった将来の成長に向けた戦略投資や、維持効率化投資を行いつつ、株主還元の充実もあわせて検討している。

2023年度

対話の事例

回答

近年、利益成長が顕著だがその背景は?

ヘルスケア事業(シリカゲル、医薬品原薬・中間体)の拡大が大きな原因。

糖尿病治療薬のGLP-1は肥満症治療薬としても注目されているが、御社のシリカゲルはGLP-1の精製工程でも使用されているか?

当社のシリカゲルは医薬品製造において不純物を取り除く精製工程で使用されており、糖尿病治療薬をはじめとする中分子医薬品で採用されている。GLP-1の精製工程でも使用されていると認識している。

肥満症治療薬の将来の需要増加に備えて設備増強を実施されているが、想定以上に需要の立ち上がりが早い場合の対応は?

松山工場に新製造設備を建設中である。2024年9月に完成予定で、バリデーション期間を経て2026年から商業生産を開始する計画である。さらに、松山工場だけでは製造能力が不足するとの予測から、尼崎工場に1ライン増設を決定、着工している。尼崎工場の新製造棟は2026年度から商業生産を開始する予定で、両工場の増設により生産能力は現在の約2倍となる。増設が完了する2026年までは、運転延長による増産対応や、収率アップ、生産工程の効率化等も併せて実施し、需要を取りこぼすことの無いよう対応していく。また、需要の時期を見て迅速に次期増設の計画を検討することも視野に入れていく。

肥満症治療薬がブームになると、シリカゲル事業に対して新しい企業が参入してくる恐れがあると思う。御社の強みや参入障壁について整理して教えて欲しい。

当社のシリカゲルは、50ミクロン以下の微細なもので、サイズの均一化だけでなく、表面に空ける細孔の制御や、化学的に表面を修飾し分離精度を高める技術が求められ、その製造には高い技術力が必要である。当社では分析用途、分取精製用途ともに同じ製法で製造しており、顧客の開発段階からスケールアップまでフルサポートできることが当社最大の強みであると考えている。

さらに、医薬品製造に組み込まれて認証を取得されるため、一度採用されると容易に切替えが出来ない製品である点も、参入障壁が高い理由と認識している。

機能化学品のアクリルゴムはどのような広がりを見せているのか?

他社のアクリルゴムからの代替も進めているが、一方で、別の違った素材から当社アクリルゴムへの切替も進んでおり、少しずつ成果が出ている。

エピクロルヒドリンゴムは需要面でしばらく停滞するのではと思っていたが、需要自体は堅調に推移しているのか?

一昨年から昨年に対して販売数量は増加し、さらに今年度も前年から増加見込みで、需要自体は堅調に推移している。今はEVそのものが少し逆風にあり、ヨーロッパを筆頭にエンジンを搭載したハイブリッド車やPHEV車が見直されている面がある。また、インドを筆頭に途上国では排ガス規制対応として他材料から当社のエピクロルヒドリンゴムへの切替の動きも進んでいる。

アリルエーテルの増設はしないのか?

電子材料や土木建築材料に使用されるシランカップリング剤向けの市場成長率は年率3~4%の伸びとみている。中長期的には確実に成長が見込まれるが、2023年度は中国向けで需要が一時低迷した。そのため増設時期については検討中だが、いずれ将来必要と考えている。

今後の収益の見通しは?

ヘルスケア事業は堅調に拡大するとみている。基礎化学品は市況に左右されるところもあるが生産体制の効率化運用を行い、コスト面で柔軟な対応を行っていく。機能化学品はアリルエーテルの市況に左右されるが、合成ゴム・合成樹脂は安定的に利益を出すことができるとみている。